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電子商取引の概念は混乱の元?

ひろしま産業振興機構の企業情報化調査で改めて考えさせられたのが、
「電子商取引」というわかりにくい概念です。調査表によれば、

「電子商取引」とは、インターネットやインターネット以外のコンピューターネットワーク(例:企業間の専用回線等)を利用し、受発注等の商取引を行っていることをいいます。 ホームページを活用したインターネットショップは電子商取引の代表例でありますが、電子メールで受注・発注や見積等をやり取り している場合も「電子商取引」 として扱います。

この定義はWeb1.0のままです。今日では「電子商取引とはインターネットを利用し、商取引を行なうこと」とすればよいと思います。ずっとわかりやすく、実用的です。今日ではビジネスにインターネットを使うのはあたりまえのことで、ことさらこの言葉を使う意味もないほどです。

以下に詳しく述べてみましょう。

●今回の調査でホームページの開設目的を問う以下の質問があります。ここには「電子商取引」はありません。

□ 会社紹介(会社のPR)  
□ ホームページデザイン(会社イメージアップ)
□ 商品・技術紹介(販路拡大)
□ ホームページを見に来た人とのコミュニケーション(ニーズ把握・情報収集)
□その他

この質問項目で、ネットショッピングを目的にサイトを開設した企業はどの項目に記入したのでしょう?

サイトの開設目的とは別に「③電子商取引に自社のホームページを活用していますか?」という問いがあります。

この質問に、ネットショッピング運営企業は自信をもって記入できますが、B2B企業は迷うのではないでしょうか?電子商取引の定義がしてあるからなおさらです。フォームで問合せを受けるのは電子商取引?問合せが電話であったのは非電子取引?

●混乱の原因は電子商取引の定義にあります。

この定義はIT技術よりの定義で、商取引プロセスはすべて電子化できるという思い込みによる定義だと思います。技術的には可能でも、現実に合わないものは普及しません。

B2Cに限らず、B2Bにおいても、つまりビジネスサイトは全て営利目的でサイトを開設するのです。営利とは商取引のことであり、ことさら電子商取引という狭い概念で分類する必要があるとは思えません。

買い物カゴがあるサイトが電子商取引サイト、問合せボタンしかないのは非電子商取引サイトというのは意味のない分類です。また、企業PRやイメージアップはあいまいな疑念ですが、つまるところ営利目的でやるのであって、商取引を活発にするためにやるのです。

●ユーザビリティの権威、ヤコブセン博士は次のような鋭い指摘をしています。(B2Bのユーザビリティより引用)

B2B と B2C で最も異なる点の 1 つは、B2B 企業がeコマースに拘わっていると認識していない点だろう。B2B サイトにはショッピングカートがないから、そう感じるのかもしれない。B2B 製品は、単純なショッピングカートに入れるボタンでは買えないことが常だ。たとえばカスタムメードなどの形で配慮が必要なことがある。また価格も固定したものがなく、顧客ごとに調整されることもある。

問題にしなければいけないのは、B2Bサイトが(電子)商取引にかかわっていると認識している企業がまだ少数な点です。

今後、商取引に何らかの形でインターネットを利用しないことはありえません。完全な「電子商取引」はIT企業が自らですら実践できていないのです。少なくともウェブ担当者には無意味な概念といってよいでしょう。


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コメント

ひろしま産業振興機構でございます。
情報化サロンでは,先生には大変お世話になりました。
今後も引き続きご指導の程,よろしくお願いします。
さて,情報化実態調査の解析ご意見について,ご拝読し大変参考になりました。
確かに,先生がおっしゃるとおり「電子商取引の概念は混乱の元」でございます。
この調査を始めた当初は,別にWeb2.0を意識した(当然その頃にはWeb2.0そのものの概念がありませんでしたが)わけではありませんが,「電子商取引=インターネットを利用し、商取引を行なうこと」という意識でありました。
従って,その頃のe-Japan戦略や県の中期ビジョン計画では中小企業における電子商取引の導入率の目標が50%と設定されておりましたので,ずいぶんと高い目標値であると感じておりました。(当時の情報化実態調査では15%の導入率でしたから)
その後,(記憶が薄いのですが)確か平成16年の頃だったと思います,e-Japan戦略における中小企業の電子商取引の導入率の目標値であった50%を全国的に達成という情報を聞いて,電子商取引の定義がインターネットやインターネット以外のコンピューターネットワーク・・・・であることを知ったのです。
それからですね,調査がややこしくなったのは。
最近では,ECOMの調査でも前者を「狭義の電子商取引」後者を「広義の電子商取引」と区別しており,本当,混乱してします。
加えて,BtoBとBtoCのサイト形態の違い・・・調査を実施しました我々もBtoBに関しては調査回答にブレがあるのではないかとも考えております。(本当は広義の電子商取引で把握できるのでしょうが,おそらくその意図は回答者にはなかなか伝わらないと思います・・・。そういう意味で「問題にしなければいけないのは、B2Bサイトが(電子)商取引にかかわっていると認識している企業がまだ少数ない点です」と言われていることは,ごもっともです。)
前置きが長くなりましたが,我々がこの調査で把握したいのは,どのくらいの企業の方々がインターネットをあるいは自社のHPを上手く利用されているかということであります。
先生のHPやブログに書かれていることは,大変参考になることばかりでいつも感服しております。
私も梅田望夫氏の『ウェブ進化論』を読みました。
これから時代はWeb2.0へどんどん進化していくことは間違いないと思います。
それともに企業のHPも大きく変わっていくことでしょう。
どうか,そのためにも企業HPのバイブルとなるべく,このブログを発展させていってください。我々も心から応援いたします。ありがとうございました。


投稿: 山中尚之 | 2006/08/14 06:42

ひろしま産業振興機構さまからコメントをいただきました。誠にありがとうございます。

電子商取引について、E-Japan戦略で普及目標があること。しかもそれが50%とは知りませんでした。

E-Japan構想はクリントン政権の情報ハイウェー構想に対抗して打ち出された、壮大な政府主導の戦略だったような記憶があります。電子政府化や広帯域ネットワーク化ではかなりの成果がでているのではないでしょうか?

ウェブのように新しい技術は、どのように利用されていくのか5年先でも予測するすることは、誰も出来ないような気がします。技術的な可能性は、利用される可能性ではないからです。電子商取引の概念も一例といえるようです。

ともあれ、産業振興機構さまが地道に実態調査されているおかげで、夢や願望の色眼鏡をはずして現実を見ることができます。

ご苦労も多いかと存じますが、公共機関として今後とも調査を継続していただきますよう、よろしくお願いいたします。

投稿: 中小企業ウェブマーケティング研究会 | 2006/08/20 18:41

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